考えれば考えるほど心底恐怖するタイプの正統派ホラーだと思います。ラストで賛否が分かれそうですが…とにかくコワイ。手繰っていくと根は同じ。
個人的評価:★★★★★★★★☆☆ 80点
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2016年01月30日公開/107分/日本/映倫:G
監督:中村義洋
出演:竹内結子 橋本愛 滝藤賢一 佐々木蔵之介 坂口健太郎

<あらすじ>
ミステリー小説家である私(竹内結子)に、読者の女子大生・久保さん(橋本愛)から自分が住んでいる部屋で変な音がするという手紙が届く。早速二人で調べてみると、そのマンションに以前住んでいた人々が自殺や心中、殺人などの事件を起こしていたことが判明。久保さんの部屋で生じる音の正体、そして一連の事件の謎について調査していくうちに、予想だにしなかった事実がわかり……。
(以上シネマトゥデイより)

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穢れ=不浄。汚れ。
死・出産・疫病・失火・悪行などによって生じ、災いや罪をもたらすとされる。

この冒頭で示される一文がすごくわかりやすいと思いました。
まさにこの通り「死・出産・疫病・失火・悪行」によって土地の人間たちは死んでいたのです。本作はこの【穢れ】を探っていくというストーリー。
怪奇現象の原因をわりと理屈っぽく追究していきます。オバケ屋敷的なビックリ描写はほとんどなく、ひたすら厭な怪談話が坦々と続いていく感じ。

久々にJホラーらしいJホラーだなあ、というのが第一印象。大筋の作りは『リング』よりも『コワすぎ!』に近い感じがしました。特徴としては主人公の語りの量が非常に多い映画なのですが、作家が取材した記録というルポ形式を取っているためそこへの不快感はありませんでした(竹内結子の話し方が若干嘘くさいとかはありましたけど)。いつも通り原作未読の感想です。

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2012年5月、すべての始まりとなる手紙が主人公・私(という役名)に届きます。
物語上の現在は2013年で、文章を執筆しているのは2016年(?)と、ちょっとややこしい時系列。まあ、そこは前後関係だけ理解できればそんなに重要でもないので苦にはならないと思います。

差出人は都内の大学で建築デザインを学ぶ女子大学生・久保さん(仮名)。彼女は郊外のとある町へと越したばかりで、入居した<岡谷マンション>にて怪奇現象と遭遇。和室で【畳を箒で掃くような音】が聞こえるのだというのです。奇妙な音の原因を探るべく、前半は橋本愛だけで調査を開始。

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調査した結果、何の音だったかというと【首を吊った老婆が着た着物の帯が畳を擦る音】だったのです。ここにはそこまで驚きもないですが、幼い少女にブラブラ揺れる首吊りババアを見せて「ぶらんこ!」と言わせちゃうあたりはちょっと面白かったです。さらに、ウサギのお人形で無邪気に首吊りごっこをする少女。恐怖っていうか、単純に気色悪いし厭味満載。

こんな薄気味悪い部屋すぐにでも引っ越したい!と思いそうですが、久保さんは心霊研究会の部長を務める変わり者。なので、しばらく部屋に住み続け事件の真相へとガンガン首を突っ込んでいきます。
その後は竹内結子とコンビを組み、調査を継続。

ここからは【穢れの歴史】についての(雑な)あらすじです。
久保さん宅から始まって過去に遡っていく構造で、要は土地に根付いた【穢れ】を二人で追及していくんですね。調査方法は関係者へのインタビュー形式。

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<岡谷マンション>
2012年5月、202号室で【畳を箒で掃くような音】が聞こえる。

202号室の前住者・梶川は【赤ん坊の泣き声】に悩まされていた。
→2012年5月19日、梶川が転居先にて首吊り自殺。

2012年秋頃、201号室に越して来た家族が【悪戯電話】に悩まされ転居。
→その後転居先にて一家心中。

2010年7月、405号室で【首を吊った老婆の幽霊】を幼女が目撃していた。

不動産屋に確認したところ、マンションで過去に自殺や死亡事故はない。
(2013年現在)

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<マンション以前>
部屋ごとにおかしいのではなく、マンション自体がおかしい。つまりマンションが建つ以前に自殺があったのだと結論づける。2001年時、岡谷マンションのある土地は駐車場だった。

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<小井戸家>
1991年、独居老人が住んでおり有名なゴミ屋敷だった。

1992年7月、家主の小井戸氏は死後二週間が経ってから死体で発見される。
死因は病死。
家の中で何かを見たために空間をゴミで埋めていた。
「隙間が嫌い」な人だった。

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<高野家>
1987年、妻・トシエが首を吊って自殺。
娘・レイコが堕胎を繰り返した(?)ことが原因。また、床からボコボコ沸いて出る赤ん坊の泣き声に悩まされていた。

根元家の婆さん:縁側に寝そべり床下に話しかけていた。
前住者・川原家の息子:布団に火を点ける、電話をかけまくる等の奇行。

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<中村美佐緒>
1952年、千葉に移り住んで逮捕される以前長屋で生活していた女性。
毎年のように堕胎を繰り返し、胎児を殺していた。
家の床下から赤ん坊の絞殺死体が見つかる。計七体の死体。
供述によると、床下から聞こえる「焼け、殺せ」という声に命じられたという。

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<吉兼家>
吉兼友三郎は明治三十八年、十五歳で発病。
家族に殴りかかり家に火をつけようとして拘束。
以後「怨ミヲ云フ声アリテ。ソレガ焼ケ殺セと命ジル」のだと訴えて暴れることが続き、翌年私宅監置が許可された。
妻・三喜が嫁ぐ際に嫁入り道具として持ってきた婦人図(絵)が原因。


ここからは作家・平岡芳明と心霊マニア・三澤徹夫が仲間に加わり舞台は九州へ。最恐物件観光ツアーin福岡という楽し気な展開になっていきます。
(そんなダサいセリフも名称もないけど)

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<奥山家>(九州・福岡にある三喜の実家)
炭鉱経営をしており、火災があった際に鎮火のため100名以上を見殺しにした。
死んだ労働者たちの怨みによって、絵の顔が歪むように…。
最後の当主は家族を皆殺しにし、その後近くの山で首を吊って死んだ。

<奥山怪談>
奥山家の屋敷は北関東の旅館に移築され、そこの主人が火をつけて全焼。
炭鉱の跡地には現在廃墟となったモーテルがあり、肝試しに入った男性グループが殺傷事件を起こしている。
奥山家の長男は傷害事件を起こし、獄中で首を吊った。
奥山家の欄間を買い取った家が愛知にあるのだが、欄間越しに仏間を覗くと地獄が見えるらしい…。

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<真辺家>(後に奥山家の土地へ住んだ一家)
当主は悪趣味な収集家という噂だった。しかし実際は神にも仏にもすがり、ありとあらゆる手段を尽くして悪霊と戦っていた。それらは何の役にも立たず、最期は日本刀により自殺。

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こうして不幸な連鎖は何十年にも渡って繰り返し起こり続けていたのです。
最初は一部屋のみの怪奇現象だと思っていたものが、マンション全体、前住者の転居先、九州・福岡と、どんどん範囲が広がっていき、【穢れ】の発端(らしきもの)を突き止めたところで主人公たちの【過去を巡る旅】は一応終着します。
なんとなく止め処の無い話なんですよね。掘れば掘るほど何かありそうで…。
恐ろしいとは感じつつも、話が繋がっていく気持ちよさは何度もありました。
そして映画としての説得力もあったと思います。
もしかしたら津山三十人殺しもこんなことが…というような無駄な想像力も掻き立てられて、楽しかったですよ。

その後、久保さんは唯一接したことのある人間が死亡したことで(?)踏ん切りがついたらしく「もうやめませんか」と遅すぎる弱音。
さらに、一度は消えた怪奇音が転居先で再び鳴り始め…。

この話が恐ろしいのは関わった者が全員死んでいくところですよねー。
話しても祟られる。聞いても祟られる。
しかし岡谷マンションの住居者の中には霊と遭遇しない人間もいる。
調査隊のメンバーは映画が終わった後に死んだんでしょうか…。
【穢れ】に触れた人間は死ぬということなのだけど、そこの部分が最後まで曖昧で、それだからこそ恐ろしくもありました。厭な映画ですよ(褒めてます)。

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中村義洋監督はこれまで新作を撮るたびに(キャストなんかに惹かれて)一応観てはいたりはしたのですが、いつもそれほど面白くなくて…。
しかし今回は好きでした、そもそもの題材も良いですし。
キャリア初期はホラー映画ばかり撮っていたようなので、元々こういうのが得意だったんですかね。最高傑作だと思いました!(全部は観てないけど)
じわじわ恐ろしい映画でしたしゾクゾクできるのでオススメです。
ところどころ真実味もありました。

ただ、不満ってほどでもないですがオチだけは「うーん」という感じ。
そこまでが最高だっただけにちょっと興醒めの感もあり…。
終盤に主人公が悪戯電話を取って…っていうところまではよくできた恐怖映画(というか怪談映画)だと思います。でも、その後にも2シーン続くんですよね。
まあ、アメリカ人が好みそうな絶叫描写ですよ。これは要らない!
サービス精神だったんでしょうか…。
怖くもないし、嬉しくもなく、微妙な気持ちになりました。

あとは橋本愛ちゃんがふっくらしてきたなー、と思ったり。
坂口健太郎が今回もニタニタしててサイコー、と思ったり。
日本刀での自害シーンはもっとよく見せてくれ!と思ったり。

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たぶん平山夢明さんがモデル。面白がるツボが鬼畜。