もう一度観たいとは思いません。
凹みました。原作未読。
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆ 70点
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2016年10月15日公開/98分/日本/映倫:G
監督:三浦大輔
原作:朝井リョウ
出演:佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之

公開初日に観てきました。予告を何度か見た程度で、原作への思い入れはないです。読んでません。とくに朝井リョウのファンでもありません。『愛の渦』の三浦大輔監督作なので観ました。観ましたが、爽快感はあんまりなかったです。エグいエンタメでした。鑑賞中は、胸のあたりをブスブスとナイフでぶっ刺されて「お前のことだよ」と言われているような感覚で、また、痛快とも言えず、しかし残るものはありました…。面白かったです、とハッキリ言いづらいような内容でした。若者と、そしてツイッタラーに向けて作られた映画だと思います。

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あらすじ

就職活動の情報交換のため集まった大学生の拓人(佐藤健)、光太郎(菅田将暉)、瑞月(有村架純)、理香(二階堂ふみ)、隆良(岡田将生)。海外ボランティアの経験や業界の人脈などさまざまな手段を用いて、就活に臨んでいた。自分が何者かを模索する彼らはそれぞれの思いや悩みをSNSで発信するが、いつしか互いに嫌悪感や苛立ちを覚えるようになる。そしてついに内定を決めた人物が出てくると、抑えられていた嫉妬や本音が噴きだし……。
(以上シネマトゥデイより)

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感想

人間の醜悪な部分を分かりやすく描いた作品としては良い映画だと思いました。一貫して気持ち悪かったです。本音としか思えない毒々しい胸の内をドバドバ吐きまくって、同時にそれがホントのことだったりするから心が抉られる、ものすごく居心地は悪いんだけど、あえて人が言わないような痛々しいことを曝け出してくれる映画はあってもいいと思います。妙にドラマっぽく盛り上げすぎず坦々と撮っているのが良かったし、演劇的な演出を多く取り入れていて、そこが話の内容とも合い上手くいっていた気がします。

上っ面では仲良くしてても皮を剥いだら皆腹ん中は真っ黒だよね~…って話。でも、それが"普通"だし"当り前"だし、だからこそより一層イヤな気持ちにもなりました。なので、オススメはしません。

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この映画での就活はそこまで重要なものでもないように感じました。物語を語るための手段として利用しているような印象が強かったです。人間の価値が問われ他者と比較され、自分は何者なのかを突き詰められていくという点で最適だったんだと思います。結局、描いているのは人間で、『桐島、部活やめるってよ』と同じく今回もテーマは「実存」だったんだと思います(たぶん)。

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就活よりもSNSの恐ろしさを強く感じるような映画でした。とくにツイッターです。ツイッター未使用者には伝わりづらいのかもしれませんが、使用者の、とくに若者にとっては身に覚えがありすぎて突き刺さりまくる映画だと思います。

ラストで明らかになるのは主人公が最低な人間だったということでした。本アカウントでは建前ばかりを気にしており、裏アカウントで本音をぶちまけていたのです…。裏アカウントの存在を自分では隠していたつもりが、実はすべて仲間に見られており、主人公への共感が大きかったためか、けっこうな恐怖映画として見れました。上から目線で他人を見下すことで自分を正当化していたのだと思います。オチの部分なんですが、主人公は就職浪人しており就活二年目だったのです。正直、ここは「ドンデン返し!」というほど衝撃的なものではありません。しかし、このことで主人公の行動に納得できた気がします。そのための意味づけのようなものだったのかもしれません。

「自己顕示欲出しまくってるやつってサムいよな」と夢に向かって努力している人間を客観視点で見下して論評やら分析しているお前が1番サムいから気付けよ!ってことなんですが…なんか叫びだしたい気分になりましたね(笑)。これには身に覚えがないこともないので。そしてこういう文章を、もしかしたら誰か知り合いに見られているかもしれないという恐怖感。

他人を否定しているだけでは自己肯定も出来なくなり、そうすると、企業から内定を貰っても、企業に就職しても、結局は自分を認めることなどできないのかもしれません。つまりツイッターにこもって自分を正当化しているだけじゃ「何者」にもなれない、と。

誰かに認められたい。しかし誰も認めてくれない。主人公の場合、ツイッターというこもった世界で何者かをを演じることで精神を保っていたんじゃないかと思います。ツイッターという舞台上で他人を分析・否定することで、【いいね】【RT】【フォロワー数】によって「人に認められたい」という承認欲求を満たしていたのです。「わかる!」と共感すればするほど自己嫌悪に陥りそうな映画でした…。

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冒頭のシーンで「面接の1分間は、ツイッターの140字のようなもの」と言っておき、ラストの面接シーンでは「1分間で自分を説明することはできない」と言う主人公。建前を捨てて本音を言い、自分を認めてくれる場所を見つけるために前に進むことを決心した瞬間なのだと思いました。主人公は成長したんですよね、たぶん…。

何者かになろうともがく人々を冷ややかな目で見ていた主人公が、自分が何者でもない存在であることを思い知り、結末では、「自分」という「何者」かになるという覚悟が芽生え、一歩足を踏み出していく。希望に溢れたキレイな終わり方だったと思います。(ものすごくベタではありますが)

目を逸らしたくなるような当り前なことに気づかせてくれるような映画でした。そのため、この映画を観て「最悪!」という意見があっても、全然納得できそうです。むしろ個人的には「しっかり最悪」に描いてくれたからこそ好きになれた感じです。原作は読んでないので細かい部分わかりませんが、元々の題材が良かったのかもしれません。『桐島、部活やめるってよ』に比べるとインパクトは弱い気もしますが、毒味成分がわかりやすい形で表れていたと思います。

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キャスティングは皆それぞれハマっていました。役柄のイメージそのままな感じがしました。現代の若者特有のディスコミュニケーションな空気感なんかは役者の演技によるところが大きかったんじゃないかなー。

ただ、有村架純だけは都合のいい存在に思えました。重要な存在なのですが、彼女だけは浮いて見えました。仲間に本音がバレて打ちひしがれ号泣している主人公を優しく肯定してあげる天使のような存在です。こんな女が現実にいるとは思えません。リアルだったら誰からも見向きもされずぼっちになってしまいそうな主人公ですが、有村架純に人格を認めてもらえたおかげで次の面接に挑んでいくのです。彼女がいなければ絶望的な話になってしまうので、しょうがないような気もしますけど、かなり引っかかってしまいました。そして、セリフの間の取り方はいちいちテレビドラマっぽいし、こんな不自然な喋り方するやついないだろ…と思ったり。

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一番好きなシーンは二階堂ふみが主人公とやりあうところ、ここは超サイコーでした。終盤のホラー(というかサイコスリラー?)演出から「主人公がクソな自分に気づく」までの一連の流れがものすごく好きでした。単純にビビるし笑えるし感動できて、ここのシーンがあるだけでも観て良かったと思えます。エグくて面白いセリフもいっぱいあったんですが、なんとなく気が滅入るので忘れたいです…。そしてクライマックスの舞台装置が「観察者のつもりが観察されていたのは自分だった」ということを画的に見せていて、ここも大好きです。震えました。就職活動というステージ上で芝居をする役者たち、という図が分かりやすかったし面白かったです。そして、なるほどなー、という感じ。ツイッターでのつぶやきは、観客の前で演技をしているようなものということなのでしょうか。

監督は演劇畑の方ですが、セリフで語るより画で語るほうが得意な人なんじゃないかなあと本作を観て思いました。主人公のセリフも中盤までは少なめで、極力表情で語らせている印象も受けました。

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『ボーイズ・オン・ザ・ラン』や『愛の渦』でもそうでしたが、三浦大輔監督は人間のネガティブな部分をストレートに描いていると思います。要は、カッコ悪かったり卑しかったり気持ち悪かったり醜かったり、そういう汚い部分。しかし誰もが持っていて、笑えるようで笑えない。それが自分のことだと気づいた時の絶望感。そういったものを今回も全力で描いていたと思います。そして結末の部分は前二作に比べると救いを与えているような印象がありました。全体的に"わかりやすさ"を前面に押し出していた気もします。もっとポップに楽しくしようと思えば出来そうなものを、娯楽大作にしてはちょっと物足りない気持ちになってしまうのは厭味のわりに爽快感が少ないからだと思います。恋愛はあっても具体的なラブシーンなどは描かれず、それから笑いの要素も少なかったような…。個人的には、もうちょっと笑いたかったですね。思い切ってブラックコメディにしてほしいような話でした。

長々と書きましたが自分の気持ちがあんまりハッキリしてないからか、こんな感想になりました。好きと嫌いが半々くらいです。

ツイッターのツイートもこのブログもリアルで知っている誰かに見られているのだと思うと、なんとなく気持ちが悪いし恐ろしくなってきます。アカウントを使い分けている人はさらに共感するところが多いのかもしれません。個人的には、ツイッターって好き勝手発言できるから面白いんじゃないの?とも思いますし、そこの部分にもうちょっとズバッと突っ込んでほしかった気もしました…。とりあえず監督の次作に期待したいです。

あー、でもやっぱりもやもやする!この映画!オススメしません(二回目)!




このCMは最悪。ドンデン返しって知ってたら驚かないし…。