ジャスティス・フォーエバー!!
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆ 70点
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2016年09月24日公開/74分/日本/映倫:G
企画・原案・アニメーション:いましろたかし
監督・脚本:いまおかしんじ
プロデューサー:松江哲明、山下敦弘
出演:大橋裕之、山本ロザ、守谷文雄、姫乃たま、悦子ママ、佐藤宏、吉岡睦雄、速水今日子、工藤翔子、高麗靖子、テルコ、柳英里紗、相馬有紀実、中谷仁美、山下知子、寺内康太郎、松永祐樹、小川朝子、川瀬陽太

原案・いましろたかし、監督・いまおかしんじ、プロデューサー・山下敦弘!ということで、まあ超豪華なメンツです(個人的には)。しかも劇伴がオシリペンペンズで主題歌は坂本慎太郎、主演が漫画家・大橋裕之なんだから…もう観る前からツボを押さえられている感じでした。全員好きです。いつも通り前情報はあまり入れずに映画館で観てきました。公開館も少なそうですし観てる人は少なそうですね…。面白かったですよ。『山田孝之の東京都北区赤羽』の空気感が好きな人とかはけっこう楽しめると思います。


↑ちょっと独特な映画予告。

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<あらすじ>
東京の未来に危機感を覚えた主人公・西岡35歳(大橋裕之)。彼は10人の女を連れて能登の山奥へ移住することを決意する。目標額600万円を貯めるためコツコツとアルバイトを続けるフリーターの日々。しかし、ある日西岡は過労のために倒れてしまう…。合コンをゲロで台無しにしてしまったり、スナックのママに追いかけられたリ、友人に金を盗まれたり…やる気があるんだかないんだかわからない生活を続ける主人公。彼と山へ一緒に逃げてくれる女性はいっこうに現われそうにない…。そんな時、駅前で「あなたを待っています」というプラカードを首からぶら下げた裸足の女性・ヨシコ(山本ロザ)に出会うのだった…。

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西岡はヨシコに声をかけてみるが、肩を叩いたりニコニコするだけで言葉は喋ってくれない。その後、彼女をストーキングした結果、ヨシコは2歳の娘(テルコ)と二人でアパート暮らししており、夫である健太郎の帰りを待っていたことを知る。それを知った西岡は、一緒に男のことを探してあげることに…。健太郎を探しているうちに二人の仲は徐々に縮まっていく。

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テーマとなるのは”原発”とか”地震”だとか重々しいものなんですが、なんとなくのんびりした雰囲気で、想像以上にユルかった(笑)。でも、そんな独特の空気感が好きでした。熱血漢のような暑苦しさも感じなかったし、こういうオフビートな低予算の邦画って珍しいような気もします。主人公が己の正義感に突き進められて女性を救済してあげる話です。ヒロインのヨシコにはほとんどセリフがありません。なので、何を考えているのかけっこう考えさせられました。

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キャストはいまおかしんじ監督作品の常連俳優が多かったと思います。佐藤宏と吉岡睦雄(『たまもの』『かえるのうた』『たまもの』など)なんかは登場しただけで嬉しかったしテンション上がりましたねー。ひとりはスナックのママを殴り倒してビザが切れる(在日中国人)という理由で、もうひとりは西岡の金を持ち逃げしてしまい、二人とも逃亡し消えてしまう。出演したCMが当たってそこそこ売れている役者の先輩はイイ奴なんですが、誰とでもヤっちゃうセックス依存症(?)。主人公の周りにいる友人たちがクズ野郎だらけってところは面白かったし、愛着が湧くようなキャラクターばかりでした。

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飲食店の皿洗いと交通整理のアルバイトに精を出す西岡。バイト仲間にコツコツ貯めた金を持ち逃げされてしまうが、警察には届けずに泣き寝入り。さらに仲間の暴行行為の慰謝料を肩代わりしてやったりと生真面目な性格に思えました。友情に熱いという風でもないのですが、これも彼なりのジャスティスだったのでしょう。

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主演の大橋裕之さんは漫画家の方ですが、演技は魅力的だったと思います。もうすぐ地震が起こって東京は終わる、だから女を十人連れて山に逃げる!というのは…ちょっと狂信的にも思えます。それなのに憎めない存在なのは、実は行動のひとつひとつが周囲の人間を救済するためだったりするからです。不器用なりにも必死に行動する西岡の姿にはグッとくるものがありました。力強い眼力も説得力がありました。

この映画、主人公がゲロばっかり吐いてるんですよねー。要所要所で10回ほど嘔吐していたと思います。まず冒頭ファースト・ショットの登場からゲロっているし、いきなり面白かったです。合コンでのゲロ吐きも最悪で最高。それから食事のシーンも印象的で、白飯に納豆と味噌汁と海苔っていう組み合わせがすごく美味そうに見えました。「最後の晩餐」としてこういうものを選択するのは、やはりありふれた日常が最も幸福だということを言っていたのだと思います。山下監督の映画って毎回”ゲロ”と”飯”が印象的なんですが、もしかしていまおか監督の影響もあるのかなー。

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「誰かと一緒に食べるご飯は美味しい」という陳腐とも思えるそんなセリフが魅力的に映るのも役者の画力のためなのだと思いました。子役のテルコは自然な演技というか、とくにセリフもありませんでしたが、なんかドキュメンタリーみたいで好きでした。これは観終わってから知ったんですが、彼女はいまおか監督の実娘(2才)だったそうです。トークショーで「プライベートで娘の写真もビデオも撮らないから、もし亡くなっちゃっても良い思い出になると思って…」みたいなことをおっしゃっていたのが面白かったです。

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アニメーションはなんとなくテキトーで、チープで、味がありました。絵柄はいましろさんの絵だったと思います。動物の声を演じていた声優のしんちゃん(いまおかしんじ)、たかちゃん(いましろたかし)、のぶちゃん(山下敦弘)には全然気がつかなかったです(笑)。低予算であることを楽しんでいるような感じもしました。

もし東京が本当に終わるのなら、西岡の気持ちもちょっとわかるような気がします。でも、それとは逆に「人生なんていつかは終わるんだから死ぬまで楽しく過ごしたほうが得じゃない?」とも思うので、東京に残る先輩役者の言葉にも共感してしまいます。世界が終わるまでダラダラ過ごしたほうが楽しそうですしね。危険なものから目を背けて女とセックスばかりしている先輩が一番幸せそうに見えました。そういう快楽が何もなかったら、東京に居続けるのはつらいことなのかもしれません、東京に住んでいないのでわかんないですけど!

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予想してたのは山の中で女と暮らしている映画だったのですが、結局「10人の女」はひとりもゲット出来ず、秋田に着く前に映画は終わってしまいました…。ラストは道路の端でリヤカーを引いて歩く主人公のワンショット。その後、彼がどうなっていくのか見てみたかった気もします。正直、このラストには若干もやもやしてしまいました。幻のラストシーンではリヤカーに女を乗っけている構想もあったようです。いきなり都合のイイ話になっちゃいますが、そのほうが笑えて映画館を後にできたと思います。リヤカーを引いてトボトボ歩き、「邪魔だ」とでも言うように何台もの車にクラクションを鳴らされている西岡の姿を見ていると、なんだか彼の信じている考えが世間に嘲笑され、すべてを否定されたようで悲しくなりました。でも、報われないこそ心に残るんでしょうね…。

自分が信じる正義に燃えて突き進むこの感じ、すごく好きです。たとえ世間に否定されても自分が正しいと思えることを実行できるのはかっこいいと思います。惹き句にあった”ジャスティス!”という言葉の意味も観終わってから理解できた気がします。近所にキチガイ扱いされていた女性を救済することが主人公なりの”ジャスティス!”だったのだと思います…。まるで『タクシードライバー』で娼婦を救うトラヴィスのようでした。

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原作(というか元ネタ?)は『引き潮』に収録されている『不憫な女』というエピソードです。たった4ページの話なのでストーリーはほとんどありません。いましろたかしのオリジナル脚本ですし雰囲気は漫画そのままという感じ。巧い映像化だと思いました。本作はいましろたかしが主宰する映画製作会社ハリケーン企画の第一弾として製作されました。個人的に次作では『ハード・コア』の実写とか観てみたいですねー。

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<同時上映『ひとみちゃん』感想。>
二本立てだったので、ついでに感想を書いておきます。出演していた守屋さんが撮った映画(山下監督が酔った勢いで10万円を出資してくれたそうです)。山本ロザが主演のひとみちゃんを演じる10分ほどの短編作品。これは、正直よくわかんなかったです…(笑)。基本的にはひとみちゃんが部屋でダラダラしてるだけ。同居人(?)の太った小男とじゃれあってピザ食べてセックスはしてたのかなー。短すぎたのと自分の理解力不足で楽しむ前に終わってしまいました。結局、パチンコを打っていた山本ロザは姉のさとみ(一人二役)だったようで…。うーん、もう一度観てみたい。そして解説が聞きたかったです。『あなたを待っています』とは対照的に山本ロザが江戸っ子口調でガンガン喋り倒すのでそこは面白かったです。彼女の今後が気になりました。もっと長く見ていたかった…。

引き潮<引き潮> (ビームコミックス)