ゆうばり映画祭でグランプリを受賞した吉田恵輔の監督デビュー作。同年『机のなかみ』と同じく、自慰・流血・女子高生な恋愛映画。濃厚。
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆
namanatsu
2005年01月28日公開/57分/日本/映倫:---
監督・脚本・編集:吉田恵輔
出演:蒼井そら 三島ゆたか 成神涼 坂本あゆみ 三島佳代

<あらすじ>
中年サラリーマンの益雄は、通勤電車で一緒になる女子高生の杏子に恋をしており、盗撮した彼女の写真を自室の壁一面に貼っていた。妹にストーカー呼ばわりされ逆ギレした益雄は、盗聴器を仕込んだプレゼントと手紙を渡して杏子に告白するが、陰で悪口を言われていること知ってしまう。通勤電車でナイフを手に杏子に痴漢行為を働くものの、後ろから押されナイフが彼女の背に刺さってしまった。自殺を図るが未遂に終わった益雄は入院となり、すでに入院していた杏子と同室になった…。
(以上allcinemaより)

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『ヒメアノ~ル』が高評価を受けているようなので見直してみました。ストーカーじみた片想いに狂う青い三十代の恋物語。

純愛映画といえば日本では(御涙頂戴系)難病モノなんかが主流ですが、本作の主人公はチビ・デブ・ハゲの三重苦を抱える中年サラリーマン。当然彼女がいるわけもなく友人さえもいない。おそらく童貞。時期的に『電車男』との比較もあったようですが、こっちはホンモノ。ガチのブサメン。
この主人公・益雄を演じるのが吉田恵輔作品の常連俳優である三島ゆたか。そのサエないビジュアルからキャラ設定への説得力は抜群でしたよ!

たいていの映画では、クズな主人公も挫折や葛藤を経てなにかしら成長したりするもんですが、本作ではそれがなく、結局最後まで転がり落ちるだけ。
吉田恵輔がときおり見せる不快感を濃縮したような、救いのないような脚本でした。

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恋焦がれる相手は毎朝通勤電車で乗り合わせるだけの女子高生です。出会う場面は描かれず、序盤から圧倒的な生々しさで恋に狂っている主人公。

まずはオープニングから凄い!(キモい!)
タオルケットをかぶった益雄が顔を歪めて自慰に耽るというもの。
小汚い中年男のリアリティ、これがとにかく惨めで泣けてくる。
そして壁一面には意中の女子高生を隠し撮ったであろう写真がドッサリ。
まあ、傍から見れば変態なんですが…。
本人的には純粋に恋してるだけなんですよ!
画面に漂う素晴らしいボンクラ感。恋に狂ったキチガイはみんな写真を壁に貼り付けるけど、ふすまに貼るというのが日本的ですごく良い!
しかも実家暮らし。この閉塞感がなんとも言えません。

ヒロイン杏子役には前時代のスーパーAV女優・蒼井そら。
ちなみに本作はピンクでもポルノでもなく彼女はまったく脱ぎません。

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杏子は歯科助手のアルバイトをしています(職業のチョイスがエロすぎ)。
益雄は仕事が終わると、杏子の生活を監視する日々。
そんなある日、妹が彼氏を家に連れてきます。
その際に自室のキモいストーカー写真を見られてしまい、「好きだったらいいかげん告白しなさいよ!」と妹から説教を喰らってしまいます。
ムカついた益雄は杏子に告白することを決意するのでした。

翌日、彼女にプレゼントと恋文を渡すのですが、これがホントに最低。
クマのぬいぐるみに盗聴器を忍ばせるクズな主人公・益雄。
彼女にどうにか物を受け取らせ、その場を離れるとすぐさま盗聴。
すると、手紙を読んだ彼女が「きもちわるい」と言っており、渡したプレゼントは投げ捨てられてしまう…。そのことでトイレで号泣する益雄。ここのドキドキ感は楽しかったし、追い打ちのように壁のラクガキにバカにされる演出も面白すぎ。

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彼女にふられたことで5日も会社を無断欠勤するダメ人間・益雄。
そして歪んだ愛情はさらにクレイジーな方向へ。
「こんなに愛しているのに、ひどい!」(とは言ってないが、そんな感じ)
逆恨みから益雄は彼女への復讐に向かいます。

とんでもなく身勝手!でも、こういう奴は絶対に現実にもいるはず!

復讐の方法は、電車に乗って、ナイフで脅して、彼女を痴漢!
欲求がストレートすぎて…嘘のないところは好感度大だ!(しかしクズ!)
そして、まんまと生尻を触れたものの、彼女の背中を刺してしまいます。
刺されたショックで失禁する杏子。足元の溜まりに滴り落ちる血。

ここすごくエロいんですが…発想がどうしようもないし、なりゆきも最悪!
本当にこいつには死んでほしいと思いましたよ!!

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で、死のうとする主人公。
罪悪感から廃墟にて自殺を試みます。
しかし、首を吊った瞬間に「やっぱり死にたくない」という想いが爆発!
ジタバタ暴れた結果、運よくロープがほどけ地面に着地。

(死ねよ!ちゃんと死ね!)
ここ超面白かったけど!

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落っこちて転んだ拍子に細めの鉄パイプが首筋に刺さってしまいます。
ここで吉田恵輔が塚本晋也から受け継いだ【人体から鉄片】という秘儀を披露。
さらにこの鉄パイプの穴から血がドロドロ吹き出すという滑稽さ。
痛そうだし哀れだし面白味もあり、このシーンは地味だが最高だ!
ごく自然に「いででででで」と唸ってしまう三島ゆたかも巧い。

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首を怪我したことで入院することになった益雄。
なぜか知らないけど偶然にも杏子と同じ病室に!
しかもすぐ隣のベッドって…都合良すぎるぞ!

まあ、でもここからようやく二人の健全な交流が始まっていくのです。
お菓子やマンガなどを与え合うことで徐々に仲良くなっていく二人。
マンガのチョイスなんかはお互いの人柄が出てて良かったと思います。
(『ジャイアント台風』『餓狼伝』『ときめきトゥナイト』『恋愛カタログ』など)
顔を合わせることはありません。
カーテン越しに腕だけ出し合って会話するという奇妙な関係性。
主人公は顔を見られたら痴漢の犯人だとバレてしまう、しかし杏子と話がしたい。そういう微妙な感情がよく表れていたと思います。
顔見られたくない!っていう場面はもうすこし早い段階で入れてほしかったけど、このあたりは幸福感もあり、楽しかったですよ。
音楽もひたすら軽快でウキウキ感を煽るもの。

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しかし、杏子の元カレが病室にやって来たことで幸せな日々も終わってしまうのでした(元カレはフツーに浮気している軽薄な奴)。ここはちょっとエグめ。

夜中性欲を満たすため訪れた元カレがエロいことをしつこくせがみます。
しょうがなく口でヌいてあげる杏子。
それをカーテンの隙間から見てしまった益雄は絶望し号泣。
そして泣きながら服を脱ぎ、オナニー。(キモいが切ない!)
彼女の制服(?)に着替え、杏子の前に姿を現す益雄。
シーンが変わり、唐突に益雄の自殺シーン。
<おわり>

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わかりにくいですが、誰かが首吊ってるラストショット!(たぶん主人公)

とにかく結末がいきなりなんですよね!!
途中までじっくり丁寧に描いている感じもあり、面白かったですよ。
けどラストがちょっとわかんなかったです。
言わんとしていることは分かりますが、最後の急ぎ足感がどうしても気になりました。なので、もうちょっと長く見たかったという感じ。

基本的には不完全で愚かな人間がいてこそ映画は面白くなると思ってるタイプの人間なので、こういう主人公は全然アリでした。
とは言っても、こいつが生き延びてたら胸糞悪くなったような気もします。
そのため最後に自殺という選択は間違ってないと思いましたよ!

『さんかく』『純喫茶磯部』『机のなかみ』そして本作と、一方通行な片想い映画ばかり撮っている監督ですよね。恋は成就しないという価値観なんでしょうか。好きだなー。

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幼い頃に友人の姉を見て女子高生に憧れた主人公だったのでした。

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これも男が破滅していく話でしたー。最高に面白い。

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吉田恵輔だったら個人的にはこれが一番好きなんです!!