苦手になってた行定勲でしたが、十年ぶりくらいに面白かった。
好きです。原作未読。
個人的評価:★★★★★★★☆☆☆
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2014年6月21日公開/113分/日本/映倫:G
監督:行定勲
出演:芦田愛菜 伊藤秀優 八嶋智人 羽野晶紀 いしだあゆみ 平幹二朗

<あらすじ>
大阪の団地で大家族と暮らす小学三年生の渦原琴子、通称こっこ(芦田愛菜)は、温かな愛情に包まれながらもいつも不満だらけ…。
家と学校という限定された世界の中でいろいろなことを悩み考えるこっこが、祖父・石太(平幹二朗)から<イマジン>という言葉の意味を教わり、他人の痛みを想像することを学んでいくひと夏の成長物語。
(あらすじはつまらなそう) 

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偏見なく自分の価値観で好き嫌いを判断している感じが、嘘っぽくなくて気持ちよかったです。
こっこの価値観はものすごくシンプルです。
普通がつまらない、普通じゃないことがカッコイイ。
自分の知らないなにかを持っている友人たちが羨ましい。
【吃音症】も【在日韓国人】も【ボートピープル】も羨ましいしカッコイイ。
死ぬのだって、カッコイイ(これはわからなかった)。
それだから、こっこはなんでも真似をする。
けれども自分の言動で周りの人間たちがおかしな反応をすることがある。
そんな友だちの気持ちがわからない。
そのことでこっこは悩みます。

まだ常識や社会的な価値観が定まっていない小学三年生。そういったものを学んでいく過渡期にある少女だからこそ妙に納得できたような気もします。
これが中学生なら厭味があるし、幼すぎたら悩むことすらないかもしれない。
そういう意味で絶妙な年齢設定に思えました(原作が良いのかも)。

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まずは【ものもらい】に憧れるところから話が始まります。

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そして【不整脈】からの【パニック】に憧れる。

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最初に憧れたものは【孤独】だった。

ある日の円卓で、両親は赤ちゃんが出来たと家族に報告します。
しかし喜ぶ皆をよそに、こっこだけは嬉しくない。
「家族が増えたら手放しに喜ぶべきって決められた反応が、なんかキショイ」
嬉しがる気持ちがわからない。
その夜、悩みを打ち明けたこっこは祖父にイマジンすることを教えられます。
祖父・石太「想像するのじゃ」

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前半はけっこうやりたい放題の芦田愛菜(表札を舐めている)

夏休みが始まり、こっこは一人で草むらに坐りこみ、自由研究をしていました(腕の血を吸った蚊を殺し、ノートに貼りつけていくという個性的なモノ)。
するとそこへ突然、ロン毛に全身タイツの胸にSをつけた不審者(のちに鼠人間と命名)がやって来る。くねくねと奇妙に動き、ごろんと仰向けになると自分の顔を指さして「ご尊顔、踏んでくれはるのん?」と言う。顔を踏んでくれ、と理解したこっこは動揺しつつも顔を踏みつける(けっこう長めにぐいぐい踏んであげる)。

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すべて見終わって一番印象に残ったことは、やっぱりどうしても、この不審者Sのことでした。
不審者Sの願望を嫌々なりとも叶えてあげたこっこはエラかったし、その後、自らうさぎに顔を踏ませて不審者Sの異常な心理を全力でイマジンしようとする彼女がどうしようもなく愛おしくなってきます。
結局それが理解できたかどうかはわからなかったけれど、うさぎに引っ掻かれて顔面から血を流し黙りこくっているこっこを見ていると、なんだか泣きたくなってきます…。
理解できるかどうかは重要でなく、イマジンするという行為こそがこっこの成長だったのです(たぶん)。それに、なんとなく不審者Sが救われたような気にもなりました。負を肯定、まではいかないけれど無下に否定したりしないところがこの映画の良さなのだと思いました。

しばらくして、不審者Sはこっこと同様(かそれ以上)の被害を受けた少女からの通報により逮捕に至ります。
逮捕される現場をこっこが見に行くと、ちょうど連行されているところで、見物する野次馬の中に立っているこっこを見つけた不審者Sはセリフこそないもののパトカーに乗せられるまでの間に何度か振り返り、こっこを見つめるその眼は「踏んでくれてありがとう」と言っているようでした。
その後ブランコでの会話から、顔面から血が出るまで力強く踏んであげていたことも明らかとなり、このとき本当にこっこが好きになりました。
映画のキャラクターに”ありがとう”と思えれば、もうそれはきっと良い映画に違いありません。

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この映画で最も感動するシーン(うさぎに顔を踏ませている)

無気力少女・成海もよかったです。こっこが一連の行動を見てしまった瞬間も面白かったし(なにより隣の席の男子のその後のリアクションが無駄に阿呆面)、ラストの紙吹雪も80年代ぽくてイイ感じでした。
闇が深そうで案外平凡というのも…残念とはならず、ちょっと意外性があったのでいいと思えました。
不登校の理由が「つまらんから」とか、共感しかないです。

そんな感じで、少量だけども流血シーンはあったし、人妻の中村ゆりは相変わらずちゃんとエロかったし、映画に求めていることはギリギリ満たしていたので、この映画はポジティブに観れました。面白かったです。

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机から零れ落ちる少女の闇(「しね」の紙片)


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